「社労士試験ってなんで合格率が低いの?」
「何回も受ける人がいるって聞くし、挑戦したいけど不安も大きい」
社労士試験をこれから受けようと思うあなたの疑問や不安に答えられる記事を書きました。
私は、2021年度の社労士試験に2回目の挑戦で合格しました。試験勉強を始める前は、私も「難易度の高さ」「合格率の低さ」に不安を感じていました。
このブログでは、これから初めて社労士試験に挑戦しようとしている方に向けて、難易度が高い理由も含めた社労士試験の仕組みや、勉強法などについてご紹介します。
読み終わったら、より社労士試験のことがリアルに想像できるとともに、試験にチャレンジしてみようというポジティブな気持ちが湧いてくるでしょう。
社労士試験の難易度は?試験内容と合格率を解説!
まず、「難易度が高い」「合格率が低い」と言われる社労士試験ですが、実際にはどれぐらいでしょうか?
年度 | 合格率 | 合格者数(人) | 受験者数(人) |
2014年度 | 9.3% | 4,156 | 44,546 |
2015年度 | 2.6% | 1,051 | 40,712 |
2016年度 | 4.4% | 1,770 | 39,972 |
2017年度 | 6.8% | 2,613 | 38,685 |
2018年度 | 6.3% | 2,413 | 38,427 |
2019年度 | 6.6% | 2,525 | 38,428 |
2020年度 | 6.4% | 2,237 | 34,845 |
2021年度 | 7.9% | 2,937 | 37,306 |
2022年度 | 5.3% | 2,134 | 40,633 |
2023年度 | 6.4% | 2,720 | 42,721 |
前年から合格率が3分の1以下になった年もありますが、この数年はおおよそ6%台で安定していることが分かります。
今後もこの傾向は続くと考えられています。
「数万人も受けているのだから、記念受験や冷やかしの人もいるんじゃないか?」
と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、その可能性は低いです。
私が不合格だった2020年度から翌21年度に、受験料の値上げという大きな変更がありました。それまで9000円だった受験料が約1.7倍の1万5000円に値上がりました。
コロナ禍で受験生同士の「ソーシャルディスタンス」を確保する必要があり、試験会場を増やしたことなどがその要因です。
その年、受験生界隈では「記念受験が減って合格率が上がるんじゃないか?」と言われていました。たしかに、21年度は例年と比べて約1%上がりましたが、結局、23年度には6%台に落ち着いています。
したがって、全国の受験生数万人が全力で挑んだ結果、合格率が1割を切る難易度の高い試験だということが分かっていただけたかと思います。
では、なぜ、難易度が高いのでしょうか?それは試験の特徴にあります。
社労士試験は下記の表のとおり、たくさんの法律から幅広く出題されます。
ちなみに、試験は年にたった1回、1日のうちに行われ、午前が選択式(80分)、午後が択一式(210分)となっています。
試験科目(略称) | 選択式 | 択一式 |
労働基準法及び労働安全衛生法 (労基・安衛) | 5点 | 10点 |
労働者災害補償保険法(労災) (労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収)を含む。) | 5点 | 10点 |
雇用保険法(雇用) (労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収)を含む。) | 5点 | 10点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識(労一) | 5点 | 労一・社一で計10点 |
社会保険に関する一般常識 (社一) | 5点 | 労一・社一で計10点 |
健康保険法(健保) | 5点 | 10点 |
厚生年金保険法(厚年) | 5点 | 10点 |
国民年金法(国年) | 5点 | 10点 |
合計 | 40点 | 70点 |
広範囲から出題されるこの試験に合格するには、二つのことをクリアする必要があります。
科目別の合格基準
選択式3点以上、択一式4点以上の合格基準がそれぞれの科目ごとに設定されています。
仮に1科目でも基準を下回ったら、他がどんなに良くても合格はできません。
試験別の合格基準
選択式、択一式、どちらにも合計の合格基準(例年6~7割)が設定されています。そのため、選択式全科目で3点、択一式全科目で4点を取った場合は合格できません。
つまり、社労士試験では、各科目でまんべんなく7割程度得点しないと合格が難しい試験になっています。苦手科目があったとしても、少なくとも科目別の合格基準を上回る必要がありますし、他で苦手科目をカバーするだけの高得点を目指さなければなりません。
社労士試験の難易度を高めている要素をもう一つお伝えします。
ある年、不合格だったとしましょう。選択式、択一式、どちらの合計とも合格基準を上回っていました。ただ、選択式の労一が合格にあと1点だけ足りませんでした。
その場合、どうなるでしょうか?その年はもちろん不合格ですし、次に受験する際は、全科目を受験しなければなりません。科目別の合格が存在しないのです。
ちなみに、さっきの例は私の最初の受験結果です。あと1点さえ取れていれば、と悔やみましたし、翌年の試験に向けて、もう一度全科目を勉強しなおしました。
「あと1点」で不合格になり、またその翌年も…という人の話を聞いたことがあります。これが社労士試験の厳しさでもあります。
ただ、各科目7割程度取れれば合格できるのも事実です。
この7割をどう確実に抑えるか、が重要です。この7割は基礎基本の確実な習得でクリアできます。
7割を抑えるために必要なことは何か。
それは、市販や学校で配布のテキストをしっかり読み込んで、条文や数字を理解して覚えること。そして、過去問や問題集をたくさん解いて、知識や理解をより強固なものにすること。ひたすらこのインプット・アウトプットを繰り返すことです。
突飛な問題はほとんど出ないし、出題されても誰も解けません。テキストと問題集・過去問のうち、特に基礎基本をしっかりマスターする。それに加えて、そして、毎年ある法改正の情報をキャッチできれば、合格に必要な力は身に着けることができます。
難易度の高い社労士試験に合格するために必要な勉強時間は?
社労士試験の難易度が低い理由についてお伝えしてきました。
では、それを乗り越えるためには、どれぐらい勉強したらよいのでしょうか?
巷では、500~1000時間という数字が独り歩きしています。あまり根拠がないんじゃないかな、というのが現役社労士である私の感想です。
仮に1000時間が合格に必要としましょう。受験生であるあなたは会社勤めをしながら社労士試験に挑戦します。試験の1年前から勉強を開始したあなたは、毎日どれぐらい費やす必要があるでしょうか?
平日;1日2時間×245日=490時間/年
休日;1日4.5時間×120日=540時間/年 合計1030時間
私の実体験からしてもこれぐらいが限界ではないでしょうか?
育児、介護などでもっと時間の制約を受ける方もいるでしょう。その場合はもっと長い受験勉強期間を考える必要があります。
じゃあ、これだけ勉強すれば絶対合格するか、というとそれはノーです。
年に1回しかない試験に向かって、1年間、あるいは何年も一生懸命勉強した人が受けるにもかかわらず、10%も合格しないのが社労士試験です。
受験生の中には、数か月で合格した人、一発で合格した人もいます。その人たちは数百時間程度で合格したかもしれません。一発合格はもちろん目標にすべきですが、ほんの一握りの人しか達成できていないのも現実です。
目標はあくまでも合格です。量が目標にならないようにしましょう。
とはいえ、働きながらだと、効率的に勉強する必要があります。同じ1000時間でも、2000時間でも、より高い成果を目指さなければなりません。
実際に社労士試験を目指そう、となった場合に、最初に悩むのは、「独学か?通学か?」です。
多くの受験生、特に初めて受験する人にとって独学での合格はハードルが高いです。
独学が向いているのは、
・法学部出身で、法律の条文を読むのに慣れている。
・人事部署の経験が長く、試験出題範囲の法律に精通している。
・誰に言われなくても、自らを律して勉強することができる。
このうちの二つ以上に当てはまる人です。
どれにも該当しなかった私は、2年間、某資格の学校に通いました。
通学のメリットは三つあります。
・年間のカリキュラムに沿って効率的に学習できる
・分からないことがあったら講師に聞ける環境がある
・受講生同士で仲が深まり「良きライバル」として切磋琢磨できる
ことです。
一方で、独学の最大のメリットは「お金がかからないこと」です。学校に通うと、どうしても十数万円程度の授業料は避けられません。ただし、合格に時間が余計にかかって、通学以上のお金、時間がかかる可能性は考慮する必要があります。
独学を選んでも、通学を選んでも、やることは一緒です。先ほども書きましたが、インプットとアウトプットの繰り返し。これに尽きます。
いつまでに合格しなければならないのか。いくらお金をかけられるのか。毎日使える時間は何時間か。自分の性格はどうか。
人によって環境はバラバラです。自分に合った効果的に学習できるスタイルを選択しましょう。
社労士試験の難易度の高さに挫折しないための心の持ちよう
私は社労士を志してから、合格するまでに2年かかりました。これでも短い方だと思っています。何年も何年も受け続けている人も知っています。
働きながら、育児介護をしながら1年後の試験に向けて毎日頑張り続けるのは簡単ではありません。
仲間たちから「心が折れそうになった」という声を聴いたこともあります。しかし、私自身を振り返っても、心が折れそうになったことはありませんでした。
じゃあ、私はどうしていたか。
資格の学校に通学していた私は、週に一度、休日に学校で講義を受けていました。1か月弱で1科目を習って、月末にテスト。試験日が近づいてくると、毎週のように問題演習という計画的に組み立てられたカリキュラムの中で、効率的にインプット・アウトプットを繰り返しました。
その日々の中で特に大事なのは、一喜一憂しないことです。受講生仲間で合格している人は、どんなにテストの点数が良くても悪くても、いつも淡々としていました。
平日はただひたすら、そうすることが当たり前のように勉強をするだけでした。寝る前に歯を磨くのと同じことです。やらなかったら気持ちが悪い。仕事から帰ったら、択一式の試験時間と同じ210分間、ひたすら問題集を解く。採点して、出来てなかったところを復習して、おやすみなさい。
これを毎週毎週、単調に繰り返しただけです。頼ったのは、「合格後に独立していっぱい稼ぐキラキラした私」というモチベーションではなく、習慣です。
もちろん息抜きも必要です。私は、講義と講義の間の休憩中に仲間と会話を楽しんだり、授業終わりに講師と飲みに行ってアドバイスをもらったりと、社労士試験合格に足を進めつつも、その間のちょっとしたブレイクを楽しんでいました。
年に1回の試験なので、試験日にその年のベストを発揮しなければいけません。途中で息切れしないように適切なペースで走り続けることは大事です。通学するなら学校のカリキュラムを活用して計画的に勉強しつつ、早めに日々の勉強を習慣化させることが心の平穏を保ちながら最後まで走り切る秘訣です。
本気で社労士試験に挑戦するなら難易度は関係ない
さて、社労士試験の概要と難易度が高い理由。そのために必要な勉強時間、独学と通学の違い。などを書いてきました。
ここまで読んでくださったあなたはどう感じたでしょうか?
「やっぱり自分には難しいかもしれない」
「いやいや、私ならできそうな気がする」
いろんな捉え方があるかと思います。
最後にお伝えしたいのは、社労士試験に本気で挑むのであれば、難易度の高さや合格率の低さは関係ない。ということです。
やるべきことを合格の通知を受け取るまでやり続ける。これしかないです。
数百、数千時間かかろうとも、何年かかろうとも、通学・独学のどちらを選択しようとも、やるべきことをやれば合格できます。
最初のほうに書きましたが、7割を抑えればいいのです。「何位以内」ではないので、周りのことを気にする必要はありません。
冒頭で書きましたが、試験を受けようと決心するまでに、最後まで引っかかっていたのは難易度の高さ、合格率の低さでした。
ところが、勉強を始めてみると、まったく気にならなかったです。
7割というのは、基礎基本プラス多少の応用です。それまで1年間の勉強で十分習得できる水準であり、運や天才的な閃きは必要ありません。
自分が今、どれぐらいの知識が身についているか、基礎基本を落としていないか、が重要となるので、難易度、合格率は気にしている余裕もありませんでした。
もし、あなたが挑戦するならば、今日で「難易度」「合格率」のことは忘れましょう。戦うべき相手は自分の内側にしかいません。
あなたが本気で挑戦するなら、私はそれを心から応援します!